入院医療とは

入院している方々は、入院の必要性(医師は入院の必要性を「適応」と呼びます。)があると医師に判断されて入院治療を行っている方々です。ですから、不必要な入院というのはありません。病気の状態や、生活機能の状態により入院での治療、世話が必要と考えられたということです

入院の必要性

そもそも、入院は何のためにするのでしょうか。「病気のために入院の必要性があるから。」ですが、もう少し詳しく考えてみます。入院するときには症状が不安定(疼痛、意識・呼吸・循環・消化管障害、出血、炎症、脱水、など)とか、食事・移動・排泄(排便、排尿)困難などの何らかの兆候が見られます。程度も様々です。すぐに診断がつく・様子を見ないとわからないなど経過も様々です。おおよそまとめると、入院の目的は

A)状態が悪化しないか見張ること(観察やモニタリング)

B)病気の検査をすること

C)病気の治療をすること

D)食事・排泄・入浴など療養上の世話をすること

の4つにまとめられると思います。そして、目標は

あ)病気・症状を治すあるいはコントロールすること

い)食事・排泄・入浴などをコントロールできるようになること

う)退院して以前の生活に復帰すること

の3つにまとめられると思います。

入院の目標について

上記 う)の退院して以前の生活に復帰すること は大切なことです。病気が深刻で入院しても病気を治すことが困難な状況の場合、観察や緩和治療ができても、結局亡くなるまでの期間、とくに状態を改善させる方法がないということは時に起こります。

このような例の場合は、入院の必要性はあまり高くないと考えてよいのではないでしょうか。状態がやや不安定だったり、食事や排せつなどの困難があっても、在宅医療で支援できることがかなり多いです。入院生活のために家族と会えないなどのデメリットを考えると入院で過ごすことと自宅で過ごすことのメリットとデメリットが拮抗してきてどちらでもよいのではないかと考えます。

在宅医療の向き・不向きで述べたように大量に出血している場合など症状がコントロールできない場合には結局入院をお願いすることはありますが、そういった例は少数です。

「入院したくない」場合

入院を拒否するケースについては、ご本人・ご家族が病気のことをどれだけ理解しているのかという点がポイントになります。

入院したくないと言われるときによく話を聞くと次の二つのグループに分かれます。

I)入院が必要であることをよく理解していないために入院しなくても大丈夫だろうと思っており、入院しないと病気が悪化するとか命にかかわるかもしれないなど、入院の必要性を理解したら入院を希望する方

II)入院の必要性は理解し、入院しないと病気が悪化したり場合によっては命にかかわるとわかってもなお入院治療をあえて選ばない方

がいらっしゃいます。

「入院したくない」というケースで重篤化のリスクなどのため入院治療が必要と考えられる場合には我々医療者は不幸な転帰を避けるのために説明・説得して入院してもらう責任があります。ただ、「病気のリスクを理解して、重症化や死亡する可能性まできちんと理解してもなお入院したくない例」ではどうでしょうか。この問題は医療倫理の中でも難しい問題ですし、本人、家族が本当に理解したかどうか判断することも難しいことですが、本人・家族が死亡の可能性を受け入れたうえで入院を拒否する場合には、「入院しない権利」は本人・家族にあります。(ただし、日本では他人に感染を拡大する恐れのある一類、二類感染症の場合と、自傷他害の恐れのある精神疾患の場合には本人の同意なく強制的に入院させることのできる法律があります。)入院しないと不幸な転帰になると予想される方を入院させないというのは医療者にとっては受け入れがたいことです。このような時には医師の中には入院を強制しようとする医師もいます。倫理的な問題なので正解はありませんが、冷静にお互いが納得できる解決方法を探したいものです。

入院したくない方のサポート

入院が必要と考えられる状態でもご本人、ご家族の意向で入院しない場合には在宅医療という選択肢があります。

自宅にて行える治療を提供することで症状の緩和などを行えることが多いです。

在宅医療を行う医療機関、訪問看護ステーションなどにご連絡いただければすぐにサポートを開始します。ぜひご検討ください。

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