孤独死と在宅医療の可能性

ご自宅でいつの間にか死去していたというケースがあります。

独居で亡くなっていることをだれも気付かず数か月たってしまうケース

同居の家族が居ても、なかなか起きてこないので見に行ったら亡くなっていたというようなケース

予想されていない死去がご自宅や介護施設で起こった場合には、その死は「異状死」として取り扱われます。

突然亡くなっているような場合、一般の方は死亡診断ができませんから、普通119番通報をします。明らかに亡くなっていると思われるときには110番通報する場合もあるかもしれません。

救急隊は駆け付けたときにまだ死亡したとはっきりと判断できないときには胸骨圧迫(いわゆる心臓マッサージ)などをしながら高次医療機関に救急搬送します。死亡診断には医師の資格が必要ですから救急隊は死亡診断はできません。明らかに死亡していると判断される兆候があれば救急搬送は行われません。明らかに死亡していると判断されるのは以下のような場合です。

1 「救急業務において傷病者が明らかに死亡している場合の一般的な判断基準」
(消防実務質疑応答集から抜粋)
(1) 意識レベルが300であること。
(2) 呼吸が全く感ぜられないこと。
(3) 総頸動脈で脈拍が全く触知できないこと。
(4) 瞳孔の散大が認められ、対光反射が全くないこと。
(5) 体温が感ぜられず、冷感が認められること。
(6) 死後硬直又は、死斑が認められること。
※ 以上の全てが該当した場合

この際には救急隊は医療機関への搬送は行いません。警察署へ異状死体発見の報告がなされます。

異状死体発見の報告があると警察署から異状死体の調査のために警察官が現場に来て検視を行います。現場の状況を記録し、周辺の調査を行います。検視で事件性があれば遺体は司法解剖となります。事件性以外にも死因を解剖で調査する必要があると考えられた場合には遺体は行政解剖になります。その他の場合にはご遺体の死体検案を行います。死体検案は現場に医師を呼んで行うこともありますし、警察署に遺体を運んで検案を行うこともあります。

検案のために警察署より嘱託を受けた開業医がいます。

警察署より検案の依頼を受けて死体検案を行います。遺体の状況や環境についての情報を得て死因を推定し、死体検案書を発行します。

この検案は防げたのかもしれないと思うとき

死体検案業務を行っていて感じるのは、孤独死が増えているということと、その孤独死による検案の一部は在宅医療とつながることで防げた可能性を感じるということです。

例えば、病院に通院していて、がんと診断され、余命も厳しいと予想されていた方が受診日になっても送迎してくれと電話してこないからと知人が大家さんに相談し、警察と大家さんが部屋に入ってみたら亡くなっていたという例がありました。最期に扉に向かって這っているような様子での死去でした。最期の瞬間、誰かの助けを願っていたのかもしれません。たら、ればを言うときりがありませんが、もしこの方が在宅医療とつながっていて、訪問看護師の携帯電話に連絡をいただけていたら、死去は防げなかったとしてもがんによる死去としてご自宅で看取り、警察署にご遺体が運ばれて検案となることは避けられたかもしれません。

この方以外にも、通院が困難だったために孤独死になってしまったと思われる例は数人おられ、在宅医療という選択肢がこの方々に伝わっていればと思ったことがあったのです。

病院で働く医療者の方々に在宅医療をぜひ知っていただき、通院に困難を抱えている受診者の方がいらっしゃいましたが、ぜひ在宅医にご紹介ください。

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