在宅医療は「家に帰りたい」と願う方々の願いをかなえるための選択肢です
在宅医療を行っていると、「病気の人は入院していた方が安心だろう?」とご意見をいただくことがあります。
病院は設備がそろっていて、医療者も近くにいます。確かに安心かもしれません。
病院が安心だから入院しておきたいと言われる方、そのご家族も確かにいらっしゃいます。
そういった方々に無理に在宅医療を案内することは必要ありません。
在宅医療に携わっていると「自宅の力」を感じます。
病院に伺った時に拝見すると体が弱って眉をひそめた印象の方が、自宅に帰ったとたんはつらつとして動き出すなどということはよく経験することです。
認知症が重症と病棟では考えられ、会話ができていなかった高齢者が、しゃべりだすこともあります。病棟では知らない人ばかりだから我慢していたと話した女性もおられました。
病院はアウェー、自宅はホームなのです。
入院しているときには何かしら我慢しているものです。自宅ではその我慢は不要です。入院の我慢はゼロにはなりません。自宅ではないし、他人との共同生活ですから。その我慢が平気な人もいますし、耐えられないと考えている人もいます。価値観の問題です。
入院によって何が得られるかと考える必要があるのです。
病気で療養している方とご家族で意見の相違が起こることもあります。ご本人は入院したくないと言い、ご家族は入院が安心だと言う場合です。
在宅医療を進めるためには家族のキャパシティも重要です。ご家族が看病で疲弊してしまい、ダウンしてしまうケースもあります。そうなっては本末転倒です。
ですから、ご本人の希望だけでなくご家族の希望もうかがって、最良点を探すというすり合わせが必要です。
このすり合わせのときに、入院の目的をしっかりと考えます。
治療で病気が治ると考えられれば、我慢してでも入院してくださいとお勧めします。
治らない病気のときにどうするかが難しい課題です。入院によって症状が改善するなら入院をお勧めするかもしれません。ただしその症状の改善が一時的で、またすぐ悪化すると予想されたらその入院の価値は微妙です。
病院に入院しても病気は治らず、症状の改善も乏しいと思われていても、ご家族の疲弊が回復するならばその入院には価値があります。
レスパイト入院と呼ぶ、治療よりも家族の休憩を主眼に置いた入院の仕組みもあります。
正解はない問題ですから、かかわっている人たちでよく話し合って決めていく問題です。
こういった問題は在宅医療という選択肢があってこその問題です。在宅医療を支える医療者が居なければ、自宅の力はなかなか実現できません。
在宅医療を希望される方にこの仕組みが届くようにひろめてゆきたいと思います。
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